| [ 『季刊 武術』掲載記事インデックス 2001年冬号 ] |
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今回の取材で、山西省武術院を訪問することができた。院長である閻先生のご好意により、本来は外部には公開されない体育運動委員会の資料を掲載することになった。中国国家体育運動委員会は1983年に、全国規模の武術発掘整理工作三カ年計画を制定した。山西省でも1984年に多くの武術家の協力を得て、拳械録の編集作業に入った。山西省に現存する70を超える門派の目録が翌年に完成した。これは、いわば内部資料であり、販売を意図したものではない。その中の戴氏心意に関する項を公表することは、中国においても例を見ない(人民体育出版社刊『中国武術拳械録』の中で極一部の内容が発表されたことはある)。以下は、その内容である。目録の内容は複数の伝承人から調査した結果であり、完全に網羅できていない箇所もあるとのこと。それにしても、非常に貴重であり愛好者は元より研究家にも一級の研究資料と考えられる。
概 論
戴氏心意拳は清朝乾隆年間に山西省祁県の著名な武術家である戴龍邦より伝えられた。この拳は源流である姫際可より伝えられ、後の李洛能形意拳の原型として、我が国の武術史において重要な位置を占めている。
戴氏心意拳は現在、第五代及び第六代まで伝えられ、その理論・動作・風格は伝統の古典的なものを今もなお堅持している。この門派は強烈な伝統意識と規則を重んじていて、五・六代に渡ってもなお、「只聞戴家拳打人、不見戴家人練拳」ということわざがあるほど、決して安易に教えることはなかった。李洛能の後、形意拳が広まるにつれて、その源流として注目されはじめた。戴氏心意拳と河南心意六合拳の技法には共に十大形がある。しかし、その練功法や風格・特徴は異なる部分もあり、更なる形意拳と心意拳の構成理論・歴史に関する研究と検討の好材料となっている。(整理組は)戴氏心意拳に対して、(山西省では)重点的に調査・整理することとなった。
伝 承
祁県体育運動委員会は提供された材料を反復して調査し、その結果、戴龍邦は1712年生まれで、1801年に没したと結論づけた。戴家は祁県では歴代の名家であり、河南省魯山県に商店を経営していた。そのとき、馬学礼の弟子である李政と出会った。龍邦は李を客人として迎えた。子息である文量(大閭)と文勛(二閭)と共に心意拳を交流・学習した。特に文勛の芸は高く、その名は轟いた。その後、文勛は子である五昌と一族の戴良棟および郭維漢に伝えた。五昌は子息の子道に伝えたが、子道には後継がなく、その系統は絶たれた。良棟は子息の戴魁に伝えた。戴魁は1874年生まれで、1951年に没した。魁の代で戴家は没落していき、この系統のみ外伝されて現代に残った。(以下、省略)
分布
この拳種は保守的で、山西でも練習する者は極めて少ない。現在は祁県を中心に太原・陽泉などに少数の伝練者がいる。
基本理論
この拳の基本理論は形意拳と基本的に同じである。共に静を以て基本とし動を以て用いる。気沈丹田を以て站椿功を基礎として、六合を追究する。異なる点として、心意は内を重んじ外を重んじず、神を重んじ形を重んじず、本を重んじ末を重んじない。独特の站椿功を用い、内側を鍛える。練習者は丹田を養い内勁を強くする。六合を旨として、意が気を司り、丹田より力を発する。手足膝肘を同時に用いる。どの動作においても、呑吐束展・斜正・起落を体現しなければならない。攅・抖・刹・撲・裏・束・絶などの勁法を究める。
風格特徴
心意は套路は短く、単式を多く練る。架式は低く縮み、身体の伸縮は大きい。手脚は遠く伸びず、歩は安定し束展霊活である。この他、閘勢・天地陰陽八陣図の徒手套路と六合刀・六合槍・六合棍・娥媚刺・鉄箸子の武器套路の目録があるが、ここでは割愛する。
| 五行拳 | |
| 劈拳 | (1)劈拳左起式 (2)劈拳右起式 (3)劈拳左起式 (4)右転身 (5)劈拳左起式 (6)劈拳右起式 (7)劈拳左起式 (8)右転身 (9)劈拳左起式 (10)収勢 |
| 崩拳 | (1)左崩拳 (2)右崩拳 (3)左崩拳 (4)右転身 (5)左崩拳 (6)右崩拳 (7)左崩拳 (8)右転身 (9)左崩拳 (10)収勢 |
| 鑚拳 | (1)左鑚拳 (2)右鑚拳 (3)左鑚拳 (4)右転身 (5)左鑚拳 (6)右鑚拳 (7)左鑚拳 (8)右転身 (9)左鑚拳 (10)収勢 |
| 炮拳 | (1)左炮拳 (2)右炮拳 (3)左炮拳 (4)右転身 (5)左炮拳 (6)右炮拳 (7)左炮拳 (8)右転身 (9)左炮拳 (10)収勢 |
| 横拳 | (1)左横拳 (2)右横拳 (3)左横拳 (4)右転身 (5)左横拳 (6)右横拳 (7)左横拳 (8)右横拳 (9)左横拳 (10)収勢 |
| 七拳五膀 | |
| (1)予備式 (2)通天炮 (3)掘地炮 (4)捉辺炮 (5)摸地炮 (6)斬手炮 (7)追風炮 (8)連珠炮 (9)臥虎膀 (10)犁行膀 (11)鵠膀 (12)押摩膀 (13)裏風膀 (14)収勢 | |
| 十法摘要 | |
| (1)押摩掌 (2)掘地炮 (3)捉辺炮 (4)通天炮 (5)追拳 (6)掛画托塔 (7)押摩膀 (8)鼈形 (9)双把 (10)臥盤 (11)挑領 (12)鷹捉 (13)不来顧手 (14)臥盤 (15)燕形 (16)燕展翅 (17)黒虎掏心 (18)収式 | |
| 連珠把 | |
| (1)起式 (2)臥虎勢 (3)冲天炮錘 (4)摩摸手 (5)燕子取水 (6)鷂入林 (7)鑚拳 (8)摩擠 (9)掘地炮 (10)双把 (11)擺手 (12)裏拳 (13)拗摩手 (14)進退連環手 (15)白鶴亮翅 (16)劈胸掌 (17)撒錦手 (18)鑚拳 (19)馬形 (20)斬手炮 (21)陰牽手 (22)犁行膀 (23)摸地炮 (24)摧胸貫耳 (25)提辺炮 (26)閘勢 (27)挑攬手 (28)跌起腿踏 (29)順拗勢 (30)斬手炮 (31)鷹捉 (32)収勢 | |
| 四把 | |
| (1)六合勢 (2)按頭勢 (3)車輪歩 (4)斗手 (5)寸歩 (6)箭歩 (7)横拳 (8)転身鷂入林 (9)挑領 (10)鷹捉 (11)斬手炮 (12)単点 (13)冲天炮 (14)車行入定反復(2回) (15)収式 | |
| 十形象(十大形) | |
| 龍形 | (1)龍形左起落式 (2)龍形右起落式 (3)龍形回身式 (4)龍形右起落式 (5)龍形左起落式 (6)龍形回身式 (7)龍形左起落式 (8)収勢 |
| 虎形 | (1)虎形左式 (2)虎形右式 (3)虎形転身 (4)虎形右式 (5)虎形左式 (6)虎形転身 (7)虎形左式 (8)収勢 |
| 蛇形 | (1)蛇行歩左式 (2)蛇行歩右式 (3)転身蛇呑式 (4)蛇行歩左式 (5)蛇行歩右式 (6)転身蛇右式 (7)蛇行歩左式 (8)収勢 |
| 猴形 | (1)猿猴献桃左式 (2)猿猴献桃右式 (3)回身式 (4)猿猴献桃右式 (5)猿猴献桃左式 (6)回身式 (7)猿猴献桃時左式 (8)収勢 |
| 馬形 | (1)馬奔蹄左式 (2)馬奔蹄右式 (3)転身 (4)馬奔蹄右式 (5)馬奔蹄左式 (6)転身 (7)馬奔蹄左式 (8)収勢 |
| 鷹形 | (1)鷹形左起右落式 (2)鷹形右起左落式 (3)回身式 (4)鷹形右起左落式 (5)鷹形左起右落式 (6)回身式 (7)鷹形左起右落式 (8)収勢 |
| 鷂形 | (1)左右鷂入林式 (2)鷂翻身式 (3)左右鷂入林式 (4)鷂翻身式 (5)左鷂入林式 (6)収勢 |
| 燕形 | (1)燕子取水左式 (2)燕子取水右式 (3)燕転身式 (4)燕子取水右式 (5)燕子取水左式 (6)転身式 (7)燕子取水左式 (8)収勢 |
| 鶏形 | (1)鶏形(鶏嘴・鶏脯・鶏膀)左式 (2)鶏右式 (3)転身式 (4)鶏右式 (5)鶏左式 (6)転身式 (7)鶏左式 (8)収勢 |
| 熊形 | (1)熊出洞左式 (2)熊出洞右式 (3)熊翻身式 (4)熊出洞右式 (5)熊出洞左式 (6)熊翻身式 (7)熊出洞左式 (8)収勢 |
王老師の話によると、心意の伝承者にあっても、完璧に全てが一致するとは限らない、ということらしい。実際には口答で調査したものも多く、文字の当て方なども統一されていない場合も見受けられる。また、形意のある系統でも心意特有と思われていた歌訣や名称(閘勢・三拳・進退連環、など)を用いて書物に載せていることがある。本来、どちらのものであるのかはともかく、伝承や記録のひずみは少なからずあるようだ。
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